チェコのシュコダ706RTから影響を受けたであろうキャブのデザインは好評で、ソ連初の寝台付きで、価格も安価とあって、KAZ-606トラックは発売されると多くの長距離ドライバーたちが飛びつきました。
しかし、キャブはシャシーフレームに頑丈に固定されており、エンジンの重整備をするには運転席内部のエンジンカバーを外すだけでなく、キャブをシャシーから分離せねばならず、整備士泣かせでした。
さらに充分な検証や実験をせず安易にトラックのホイールベース長を縮めたことが致命傷となり、一定以上の速度でカーブに入ると簡単に横滑りや横転事故を起こすため「サーカスの馬」という不名誉なニックネームを付けられました。この結果、クタイシ自動車工場ではKAZ-606トラックの生産を早々に中止し、キャブを利用してトレーラーヘッドを生産することになりました。
トレーラーと連結して走行するトレーラーヘッドでは、トラックのような横転事故は減ったものの、大型キャブはオリジナルのZiL-164のボンネットキャブよりも、かなり重いのに、エンジンはZiL-164のままだったので根本的に出力不足で、荷物を満載したトレーラーに連結すると動力性能が著しく低下しました。
当時、KAZ-606トレーラーヘッドのドライバーの間では定番のクイズがありました。「コルヒダで坂道を上れば上るほど増えるものは何?」答えは「エンジン過熱による車内の温度と、滑り落ちるかもしれないというドライバーの恐怖」で、この他にもKAZ-606についてのジョークや替え歌がたくさんありました。
このように「コルヒダ」トレーラーヘッドは出力不足、燃費の悪さ、走行安定性の悪さなど問題を克服できず、僅か2年で生産は終了します。
1961年からクタイシ自動車工場は、ZiL-164Aをベースとした改良型のKAZ-606Aトレーラーヘッドの生産を始めます。KAZ-606Aはエンジン出力が向上し、トランスミッションも改良され、走行安定性以外の問題点を改善したため、再び長距離ドライバーの間で大人気となりました。
彼らにとって606から引き継いだ606Aの美しく広く快適なキャブは、走行安定性の悪さを補って余りある魅力で、いつしかKAZ-606Aを乗りこなす者がベテラン・ドライバーだと考えられるようになりました。
後継のKAZ-608ではZiL-130をベースとし、新しいフレーム、前方に開閉式キャブ、さらにV8エンジンとなり、ようやく誰もが納得するトレーラーヘッドが完成しました。しかし後年、廃車から外した606と606Aのキャブを他メーカーのキャブオーバートラックに移植することが中央アジアのベテランドライバーを中心に流行るほど、このキャブデザインは愛されていたのです。
今回、レッドアイアンでは改良されたKAZ-606Aを製品化しました。デカール・エッチング付きです。
*送料無料です。
*御予約は[再入荷お知らせ希望] からどうぞ
価格:13,200円